ある雪の日のことです。中学生の太田くんは、喫茶店で同じクラスの佐藤さんと向かい合わせに座っていました。太田くんが勇気を振り絞って呼び出したのです。しかし、そこで勇気を使い果たしてしまったようで、肝心な時に何も言えないでいるのでした。佐藤さ…
K青年は、一面の彼岸花の中を、さくさくと歩いていました。 足元はどうやら、細かい砂利です。左右には、見渡す限りに赤い花が広がって、そこここで風に揺れてざわざわと音をたてます。その微かでとめどない音と、砂利を踏む自分の足音以外は、何も聞こえな…
美しき霊が消える前 夕焼けに照らされるもの 影法師は延び、沁みが大気を侵す 雨が降り注ぎ、時を暗いままにする 狭間に隠れた蛙は田園で啼くが、 いつかの子供がつけた足跡は見えないだろう 美しき霊よ それは在るはずだった 森に満ちた獣の声が、満月とと…
どうも皆さま、こんにちは。事実上Web広報担当と化している笹谷爽でございます。 我々は、2017/7/9の文フリ札幌に出店するサークルの一つです。 今さら感は強いですが、我らが灰皿札幌支部のメンバーや当日販売する作品集の紹介をさせていただきます。 1…
「では、これで今日の授業を終わります」 教授がそう言うやいなや、教室は喧騒に満ち溢れた。これで五時限目の授業も終わった。窓からは茜色の陽光が漏れている。今日の授業はこれで終わりだ。小大塚(こおおつか)博之は我先にと出口に殺到する生徒達に紛れて…